ジュネス ビンセント博士の特許公開

ビンセント博士の特許

(発明の背景) 皮膚は、哺乳動物(特に、ヒト)において、最も環境的にストレスのかかる器官である。皮膚は、毒性化学物質および不良環境(hostile environment)に供されるだけでなく、酸素の存在下で、紫外(「UV」)光に直接曝露される唯一の器官である。皮膚のUV線への長期にわたる曝露は、代表的に、皮膚に損傷を生じ、結果として、日焼け、光加齢(例えば、角化症、脂褐素沈着および発癌)を生じる。角化症は、皮膚の最上層の局所的な過増殖である。角化症の一般的な形状としては、加齢(老年性角化症)および日光への曝露(sun exposure)(化学線角化症)が挙げられる。脂褐素沈着は、損傷を受けた血球の崩壊および吸着から残される、褐色の沈着であり、これは、平滑筋において認められ、そしてまた、「加齢」沈着(aging pigment)とも呼ばれる。ヒトの皮膚に対する、日光への曝露による紫外線照射の影響は、今日の高齢者集団にとって、関心が高まっている。

UV光は、3つの波長領域に分けられ得る。UVAは、400nm〜320nmであり、UVBは、320nm〜290nmであり、そして、UVCは、290nm〜100nmである。UVCは、通常、地球には到達しない。なぜならば、オゾン層により吸収されるからである。UVA照射線は、皮膚の下層を浸透し、酸化的DNA損傷を生じることが示されている。UVA照射は、活性酸素種の形成を刺激し、この活性酸素種は、酸化的ストレスおよび損傷DNAを生じる。UVB照射線は、一般に、日焼け光線とも呼ばれ、大部分の問題を引き起こすものである。

皮膚が紫外線照射に曝露された後、フリーラジカルが生成することが周知である。皮膚内で、これらのラジカルは、炎症性メディエーターの放出を頻繁に誘発する。皮膚の加齢に対するフリーラジカルおよび炎症の影響を理解することにおいて、近年、いくつかの理論が構築されている。

非特許文献1は、酸化的ストレスおよび遺伝子発現を理解することに焦点を当てた、皮膚の加齢に対する総説を提供する。より具体的には、フリーラジカルにより誘発される炎症性の連鎖的活動(chain activity)の中でも、転写因子NF−κBおよびアクチベータータンパク質1(AP−1)が、フリーラジカル、およびフリーラジカルの活性により生成される炎症促進性サイトカインによって活性化されることが公知である。NF−κBおよびAP−1は、炎症促進性サイトカインおよび関連するタンパク質、ならびにコラーゲン消化酵素の調節において、重要な役割を果たす。NF−κBは、細胞接着分子をコードする遺伝子、およびCox−2酵素の他に、炎症促進性サイトカイン遺伝子(例えば、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8およびTNF−α)を刺激する。AP−1は、コラーゲン消化酵素(コラゲナーゼおよびメタロプロテイナーゼ)を発現する遺伝子の誘導を媒介する。フリーラジカルおよび炎症促進性サイトカインは、これらの転写因子の各々を活性化するので、結果として、自ずと増幅される炎症促進性サイクルがもたらされる。この炎症促進性サイクルは、細胞膜に対するフリーラジカルによる損傷と一緒に、細胞質の細胞小器官、ミトコンドリアおよび核を取り囲む、多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富む膜を酸化する、細胞内のフリーラジカルを生成する。ミトコンドリアは、ATPサイクルを介して細胞内のエネルギーを生成し、そして、大半の修復および再生の活動は、細胞の遺伝物質により指示されるように、細胞小器官によるタンパク質生成を介して生じる。従って、細胞膜に対する酸化的ストレスにより開始される炎症促進性サイクルは、皮膚細胞の最も基本的な機能を弱め、一方で、コラーゲンの損傷、微小な瘢痕、および皮膚のしわの形成をもたらす酵素を生成する。

分子レベル(at molecular lever)では、UVB照射により、非酸化的DNA損傷が生じ、その結果、ダイマーの形成を介して、DNAの構造的変化が生じることが公知である。より具体的には、UVB照射は、隣接する塩基を連結して、シクロブタンピリミジンダイマー(CPD)を形成することによって、皮膚におけるDNA損傷を生じる。これらは、チミジン−チミジン型であっても、または、隣接するシトシンの間であっても、他の組み合わせであってもよい。CDPは、自然の切断修復プロセスによってDNAからゆっくりと取り除かれ、24時間内に、CDPの約50%が取り除かれる。さらに、UVAおよびUVBの損傷の組み合わせは、CC−TTダイマーのタンデムな二重体(tandem double)を形成し得ると考えられる。これらのタンデム体は、p53腫瘍サプレッサー遺伝子上で生じ得、そして、扁平上皮癌の形成をもたらし得る。

DNAが損傷を受けたが、アポトーシス(自然な細胞死)を刺激するには厳密には十分でない場合、損傷を受けた細胞が、未修復のDNAを複製し、連続体(continuum)をイニシエートするという危険が生じることが理解され得る。皮膚は、水分を失い、そして、張りおよびきめを無くして、くすみ、乾燥し、そして、ざらざらする。染み、色素沈着過剰、はっきりしたライン(fine line)、およびしわが発生する。続いて、前悪性の化学線角化症が形成される。最終的に、これらの加齢斑(age spot)は、悪性の扁平上皮癌になり得る。

酸化的損傷は、DNAの種々のヒドロキシ付加体(例えば、尿中の8−ヒドロキシグアニンDNA、8 オキソグアニン、チアミングリコール、8 ヒドロキシ 2 デオキシグアノシン、およびドキソルビシン誘導性の一本鎖崩壊物(breaks))を測定することにより評価され得る。低いレベルの酸化的生成物が望ましい。

非酸化的DNA変性損傷は、一般に、細胞内のTTダイマーの形成を定量することによって評価される。ヒトの生きている上皮細胞の等価物である、HaCaTケラチノサイトを利用することによって、形成されたシクロブチルピリミジンTTダイマー(CPD)の量が測定され得る。

従来の皮膚を保護する試みは、代表的に、フリーラジカルの生成を防ぐために皮膚をUV光から遮蔽すること、または、フリーラジカルを失活させ得るさらなる因子を提供することのいずれかを企図する。多数の抗酸化物質が、光防護因子として試験されているが、これらの研究からの結果は、これらの因子の保護を提供する能力が、変動性であることを示している。

一方、種々の医薬品または美容製品が、慢性的なUV光への曝露から生じる、加齢斑を処置するために開発されている。過酸化亜鉛は、脱色剤として、無水の軟膏中で利用されている。ヒドロキノンのモノベンジルエーテルは、その皮膚の美白効果(lightening effect)について、市販されている。アスコルビン酸調製物は、有用であることが示唆されている。ナイアシンおよび窒素酸化物は、皮膚の美白に有効であると報告されている。これらの製品は、脱色することによって加齢斑を、そして、化学反応によって、局部的な退色(color reduction)を処置するが、これらは、皮膚の損傷を修復することも、皮膚の色素沈着の再発を防止することもしない。

先行技術の試み(フリーラジカルの生成を防ぐために皮膚をUV光から遮蔽すること、または、フリーラジカルを失活させることのいずれか)は、フリーラジカルによって生じる皮膚細胞における炎症性の連鎖的活動に対処することも、DNAレベルで損傷を修復することも、DNA損傷に対して抵抗することもしない。

(Peroに対する)特許文献1、特許文献2および特許文献3において教示されるように、Uncaria種の水溶性抽出物(市場においてActivar AC−11TM、またはC−MED−100(登録商標)として公知である)、従って、その生物活性成分である、カルボキシアルキルエステル(carboxyl alkyl ester)は、栄養補助食品(dietary supplement)として、意味深い栄養的サポート(nutritional support)を与えることが知られている。なぜならば、カルボキシアルキルエステルは、DNAの修復および免疫細胞応答の両方を増強し、言い換えると、加齢を調節する、重要な生理学的プロセスであるからである。これらのプロセスの両方は、NF−κBの調節を必要とする。NF−κBは、(i)細胞をアポトーシスによる細胞死から救出する核のイベント、および(ii)炎症促進性サイトカイン産生を制御することが周知である(非特許文献2および非特許文献3)。

Peroは、Uncaria種の水溶性抽出物、およびその生物活性成分であるカルボキシアルキルエステルが、HL−60白血病細胞におけるアポトーシスを、インビトロにおいて効率的に誘導することを教示する。これは、NF−κB阻害の結果である。従って、Uncaria種の水溶性抽出物は、抗腫瘍性特性、抗炎症性特性、および免疫刺激特性を有する。Peroは、さらに、Uncaria種の水溶性抽出物が、ラットおよびヒトの両方において、DNA修復を増強することを教示しており、このDNA修復プロセスは、細胞の複製および免疫機能を阻害するDNA損傷を除去するものである。さらに、Peroは、Uncaria種の水溶性抽出物を経口投与することによって、TNF−aの産生を阻害することによってか、もしくは、白血球のアポトーシスを誘導することにより、炎症性応答を阻害するための方法、および炎症性応答に関連する障害を処置するための方法を教示する。しかし、先行技術は、慢性的なUV光への曝露から生じる、しわおよび加齢斑の形成のような皮膚の損傷または変質の処置における、Uncaria種の水溶性抽出物の使用は、教示していない。

一方、(Somlyaiに対する)特許文献4、および特許文献5において教示されるように、0.1ppm〜110ppmの重水素濃度を有する低重水素含有水は、動物モデルの研究において、腫瘍の増殖を阻害する。また、ハンガリーにおける数百人の癌患者を含む、ヒトの臨床治験において、低重水素含有水は、癌患者の寿命を延長したことが報告されている。重水素は、分子以下の調節システムの構成要素であり、そして、重水素濃度を一時的に上昇させるプロセスは、細胞増殖を誘発すると考えられる。Somlyaiは、天然水の重水素含量より少ない量の重水素を含む水もしくは水溶液を投与することにより、ヒトの器官における重水素レベルは、交換プロセスの結果として減少され得、そして、このように、腫瘍形成細胞の増殖が、停止され得るか、または、癌性腫瘍の発達が防止され得ることを教示する。しかし、Somlyaiは、低重水素含有水がDNA修復プロセスに関与しているかどうかを教示も認識もしていない。

本来、水素:重水素の比は、約6000:1であることが公知である。100%の質量比に起因して、この2つの同位体は、化学反応において異なる挙動を示す。化学反応に関与するD−結合は、同位体の効果に起因して、より遅い速度で分割され、従って、これらは、増大した活性化エネルギーを必要とすることが、一般に認められた見解である。酵素的反応において、反応速度は、水素では、重水素よりも、4〜5倍速いと測定されている。

沈着物における水素同位体の世界規模の調査は、重水素含量が、主にその位置に依存して、120〜160ppmの範囲にあることを明らかにした。調査の測定値によれば、熱帯の降水における重水素含量が、155〜160ppmであるのに対し、世界中の温帯において、重水素含量はわずか120〜150ppmである。 米国特許第6,039,949号明細書 米国特許第6,238,675号明細書 米国特許第6,361,805号明細書 米国特許第5,855,921号明細書 米国特許第5,788,953号明細書 Giampapa、「The Basic Principles and Practice of Anti−Aging Medicine & Age Management」、Nespitt Granphics Inc.、2003年 Begら、「An essential role for NF−kB in preventing TNF−α induced cell death」、Science、1996年、第274巻、p.782−784 Wangら、「TNF−α and Cancer Therapy−induced Apoptosis:Potentiation by Inhibition of NF−KB」、Science、1996年、第274巻、p.784−787





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神田昌典


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